ときどき考える、ときどき日記

アラサー社畜(会社員)がこれからの人生について考えたり、日記を書いています

口に出して披露しないこと

嘘をつくのが苦手だ。嘘が苦手というよりも、その後を取り繕うのが苦手というべきかもしれない。たぶん同じ理由でお世辞も上手くない。嘘と言い切らないにしても、誰の目からも好ましい態度でその場を乗り切るスキルというのは社会人にとって大切なことだとはわかっているけれど、社会に出て何年も経った今でも、そういうことが下手だと思う。

好きな男の子の話ばかりをするような中学生時代から随分経っても、好きな異性のタイプを聞かれる機会は意外と多い。会社の飲み会なんかは最たる例だ。なぜ自分の好きな異性のタイプをおじさんたちに尋ねられて披露しなくてはならないのか…披露した内容を、わたし自身とともに値踏みされなければならないのかと思うけれど、同じような話題を友達と話しているとき、テレビで芸能人が「年収5000万無いと付き合いたくない」と発言しているのを見たときの自分も、無意識に発言者と発言内容を照らし合わせているという意味では口に出さなくても会社のおじさんたちと大して変わらないことをしている。

つまりわたしは好きな異性のタイプを尋ねられたとき、「嘘はつきたくないけど値踏みされたくない」という気持ちが強く働くのだが、それとは別に、「頭のおかしな人だと思われたくない」という意識もとても強く働いている。過去に同じ話題で話していて会社の女性社員数名から「何それ…意味がわからない」とドン引きされたことがあるからだ。皆、口には出して言わなかったが、明らかに「頭のおかしなかわいそうな子」の目でわたしを見ていた。その反応で、「わたしの価値観は世間と大きくずれているのかもしれない」と悟ることができた。

ここまで前置きしたのでドン引きされた価値観を書き、いっそこの記事を読まれた方にアンケートでも取りたい、という気持ちで勇気を出して披露したい。

当時、お昼を食べながら女性社員たちと好きな異性の体型の話をしていた。ある先輩は大きくて体の厚みのある、いわゆる「ガタイのいい」人が好きだと言った。「あのドラマに出ているあの役の人が好きなんだよね〜熊みたいな感じで」と言うのを聞いて「背が高くて肩幅あって筋肉ついてるとスーツも着映えするよね〜」と賛同する声もあがった。
すると先輩から「アラサー社蓄さんはどうなの?」と訊かれたので、こう答えた。「わたしは背の高さにこだわりはないけど、どちらかといえば細身な人が好きです。洋服が綺麗に着られるし…それにガタイのいい筋肉質な人は、ボコボコにされそうになったとき、逃げ切れないだろうし」
発言した後、皆の顔に?マークが浮かんでいた。「え?マッチョな人なら街でケンカになったとき体張って守ってくれるかもしれないでしょ?」と言われて、ハッと気がついた。わたしと皆の中で、戦う相手が違うことを。
「いや、街でケンカに遭遇したときの話ではなくて、わたしと彼氏がケンカになったとき、わたしが鈍器でも持っていればギリギリ勝てそうな人がいいんです。スポーツが得意で背が高くて筋肉質な人だと勝ち目無さそうだし、自分よりかなり重たい人だとマウント取られたらもう負けるじゃないですか。自分より10kg重かったら大体勝てないって何かで読んだことありますよ」苦笑しながらここまで言ってから、また周囲の表情が凍りついているのに気がついた。わたし、何か間違ったことを言ってしまっただろうか。

少しの沈黙を破るように「えっ!?何で彼氏と戦う前提なの!?」「アラサー社蓄さん、どうしたの??」と方々から言われてしまい、ようやく自分の発想がマイノリティーなのだと気付いた。ちなみに過去に男の人と戦ったことはないし、ボコボコにされたこともない。子どもの頃、父が母を殴るところは何度か見たことはあるし、わたし自身親に殴られたことも何度となくあり、その家庭内での行為が許されるかは別だが、ボコボコという感じではないので、DVや虐待だとは思っていない。
でも、圧倒的に暴力が怖い、という自覚だけはある。痛いのが嫌いだ。健全なスポーツだとわかっていても格闘技を見るのが好きじゃないのも、そのせいだ。
もちろん、運動が不得意でガリガリな人がわたしをボコボコにする可能性だって十分にあることもわかっている。それでも自分がそのへんの鈍器を持って立ち向かえば勝てるかもしれない、と思うのだ。わたしは平均的な女性よりも無駄に身長も体重もあるが、身体能力は平均以下であるため、本当に無駄なのだ。
しかし、あくまで好きな異性のタイプ、なので実際にお付き合いする人が細身であるとは限らない。最近お付き合いしていた人も、細身〜普通くらいの見た目だったが、長身なのでわたしよりも10kgくらい重かった。音信不通がちで戦うどころか会うこと自体少なかったけど、戦ったらきっと負ける相手だった。

結局この会話は「たぶん、あなたをボコボコにしようとするよりも、あなたを守ろうとしてくれる人のほうが多いと思うよ」という先輩の一言に周囲が同調する形で終わりになった。本当にそうなのかは分からないし、その一言で自分の価値観が変わったというつもりもないけど、以来好きな異性の体型について話題になったときにはボコボコにされるかも云々と言うのをやめている。こんな話を記事にしたくなったのは、三代目J Soul Brothersをテレビで見たときに「一番背の高い人が好きだ」と先輩が言っていたのを思い出したせいだった。利害関係にならなければ、お互い理解することもしてもらうことも困難だと推測できることは、口に出して披露しないほうが良い。