人はそれを楽しんでいる
バレンタインデーを憂慮している女性は多いと思う。御多分に洩れずわたしもそうだ。いまの会社に入社して、二度目のバレンタイン。今日に至るまで、バレンタインの風習が組織によって本当に様々なのだと身をもって感じているところだ。
学生の頃からお菓子作りが好きなわたしは、ほぼ毎年手作りのチョコレート菓子をつくり、家族や友達にあげることが習慣となっていた。
新卒で最初に入った会社では「社員全員が500円ずつ出し合う」制度が適用されていた。バレンタインでは全女性社員から500円ずつ徴収して男性の人数分を用意し、ホワイトデーはその逆。男女比7:3なので、ホワイトデーのほうが当然豪華になる。でも徴収金額は全員均一なので、今思えばフェアな印象だった。
その後、転職までの繋ぎで短期のバイト感覚で在籍した行政では、「全員で足並みを揃えたバレンタインの風習」は廃止されていた。さすが田舎であってもとりあえず「男女平等」を訴え掲げる組織ではあるなぁと思った。個人的なやりとりは禁止されていないので、やりたい人は勝手にどうぞ状態であった。
そして去年、いまの会社へ転職して最初のバレンタインを迎えた。去年のバレンタインの少し前、席が向かいで仲の良い先輩の女性と話していて、「わたしはほぼ毎年手作りでチョコつくってますよ」と言った。社会人になってからも手作りの習慣は続いていたので、家族や友達の他、最初にいた会社では同じ部署の人(9割女性)には個人的に渡していたからだ。この発言が厄介なことになるとは正直思っていなかった。
わたしは自分が個人的に手作り云々することには関係なく、「新しい会社でもまわりと足並みを揃えたい」と思っていた。しかし、この会社ではそもそも「足並み」なんて無かったのだ。バレンタインの風習はあれど、40名ほどがワンフロアのワンルームにいるため、1人で全員に配る人もいれば、2〜3人で割り勘にしつつ配布する人もいて、直近のお世話になっている人にだけあげる人もいる。全員から予算を徴収することもなければ、全面廃止でもない。ただ、バレンタインは存在する。今まで体験したことのないバレンタインだ。
入ったばかりでいろんな人にお世話になっている自覚があったので、全員にチョコを用意したほうが良さそうだと思っていたのだが、なんと数日前の自分の発言が仇となり、「アラサー社畜さんは自分でいつも作るんだって」と他の女性社員に話が回ってしまい、割り勘して全員に配布するチームから外れてしまったのだ。おそらく会話の流れで他の人にそう言った女性に悪気がないのはわかっていたので、恨むことはないけれどハードルだけが上がった感じがした。
お菓子をつくるのは好きだが、受け取る側の全員が「他人の手作りお菓子が好き」ではない、という事実を一般論として知っている。わたしは自分で作ったものを渡すとき、相手が嫌いではないか一応確認して渡している。しかし全員に配布となればいちいちそれはしづらい。受け取る側だって断りづらい。でも手作りだと思われている…悩んだ結果、一口サイズの手作り菓子と市販の大袋入りチョコレート菓子を詰め合わせにして各人に渡した。それなら最悪、手作りが嫌な人でも市販のお菓子だけは食べてもらえるし、手作りチョコは捨てればいい。というわけで一口サイズのブラウニーを作り、ブラックサンダーやアルフォートと一緒に袋詰めにした。写真はそのブラウニー。