ときどき考える、ときどき日記

アラサー社畜(会社員)がこれからの人生について考えたり、日記を書いています

人はそれを楽しんでいる

バレンタインデーを憂慮している女性は多いと思う。御多分に洩れずわたしもそうだ。いまの会社に入社して、二度目のバレンタイン。今日に至るまで、バレンタインの風習が組織によって本当に様々なのだと身をもって感じているところだ。

 

学生の頃からお菓子作りが好きなわたしは、ほぼ毎年手作りのチョコレート菓子をつくり、家族や友達にあげることが習慣となっていた。

新卒で最初に入った会社では「社員全員が500円ずつ出し合う」制度が適用されていた。バレンタインでは全女性社員から500円ずつ徴収して男性の人数分を用意し、ホワイトデーはその逆。男女比7:3なので、ホワイトデーのほうが当然豪華になる。でも徴収金額は全員均一なので、今思えばフェアな印象だった。

その後、転職までの繋ぎで短期のバイト感覚で在籍した行政では、「全員で足並みを揃えたバレンタインの風習」は廃止されていた。さすが田舎であってもとりあえず「男女平等」を訴え掲げる組織ではあるなぁと思った。個人的なやりとりは禁止されていないので、やりたい人は勝手にどうぞ状態であった。 

そして去年、いまの会社へ転職して最初のバレンタインを迎えた。去年のバレンタインの少し前、席が向かいで仲の良い先輩の女性と話していて、「わたしはほぼ毎年手作りでチョコつくってますよ」と言った。社会人になってからも手作りの習慣は続いていたので、家族や友達の他、最初にいた会社では同じ部署の人(9割女性)には個人的に渡していたからだ。この発言が厄介なことになるとは正直思っていなかった。

わたしは自分が個人的に手作り云々することには関係なく、「新しい会社でもまわりと足並みを揃えたい」と思っていた。しかし、この会社ではそもそも「足並み」なんて無かったのだ。バレンタインの風習はあれど、40名ほどがワンフロアのワンルームにいるため、1人で全員に配る人もいれば、2〜3人で割り勘にしつつ配布する人もいて、直近のお世話になっている人にだけあげる人もいる。全員から予算を徴収することもなければ、全面廃止でもない。ただ、バレンタインは存在する。今まで体験したことのないバレンタインだ。

入ったばかりでいろんな人にお世話になっている自覚があったので、全員にチョコを用意したほうが良さそうだと思っていたのだが、なんと数日前の自分の発言が仇となり、「アラサー社畜さんは自分でいつも作るんだって」と他の女性社員に話が回ってしまい、割り勘して全員に配布するチームから外れてしまったのだ。おそらく会話の流れで他の人にそう言った女性に悪気がないのはわかっていたので、恨むことはないけれどハードルだけが上がった感じがした。

お菓子をつくるのは好きだが、受け取る側の全員が「他人の手作りお菓子が好き」ではない、という事実を一般論として知っている。わたしは自分で作ったものを渡すとき、相手が嫌いではないか一応確認して渡している。しかし全員に配布となればいちいちそれはしづらい。受け取る側だって断りづらい。でも手作りだと思われている…悩んだ結果、一口サイズの手作り菓子と市販の大袋入りチョコレート菓子を詰め合わせにして各人に渡した。それなら最悪、手作りが嫌な人でも市販のお菓子だけは食べてもらえるし、手作りチョコは捨てればいい。というわけで一口サイズのブラウニーを作り、ブラックサンダーアルフォートと一緒に袋詰めにした。写真はそのブラウニー。

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全員から感想を貰えるわけではないので食べなかった人もいるかもしれないが、「美味しかった」という声もちらほら頂いたのでありがたかった。
 
1ヶ月後、ホワイトデーがやってきた。
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この写真は自宅に持ち帰った分の写真なので、実際はデスクに入れた分もあり、その場で食べる必要があるものだったりで、全てではない。こんなにお返しをもらうとは思っていなかった。味の保証のできないお菓子とお徳用袋菓子の詰め合わせのお返しがこれだとは…非常に申し訳ない気持ちになった。
 
 
そして今年、去年の顛末から悩みに悩んだわたしは何を用意すればよいか途方に暮れていた。今年こそは割り勘チームに入ろうと思っていたが、バレンタイン直前が連休になってしまったことと、なかなか女性社員だけで打ち合わせするチャンスに恵まれずでチームすら組閣できなかったのだ。とはいえ何も用意せず当日を迎えることが怖かったので、何か準備しておきたい。でも。思考がまとまらず買い物にも行けない。
こんなときのわたしのブレーンは母だ。去年のあれこれを全て話しつつ相談した。手作りにこだわりたい気持ちは無いこと、お返しが豪華すぎるので駄菓子の詰め合わせは避けたいことを伝えると「じゃあ1ランク上のお菓子の詰め合わせを作ったら?たとえば焼き菓子とか。それに全員同じ構成でなくて、お世話になっている人や去年お返しが豪華だった人と、そうでない人と少し差をつけるとか」というアドバイスを貰えた。いいかもしれない。
自分で思いつかなかった案を貰えたことに感謝しつつも「お返しがこんなに豪華じゃなければ気にならないのになぁ」と漏らした。
すると、「それを人は楽しんでいるのよ。今年は何を貰えるかなぁ、とか、お返し何がいいかなぁって。自分が美味しいと思うものをくれる人もいれば、時間が無くてコンビニで買う人もいるし、奥さんに頼んで買ってきてもらう人もいる。お返ししない人もいる。全部気持ちじゃない。去年のお返しの中に『好きなものおごる券』くれた人もいたでしょう?ああいうのも楽しいじゃない」と母から諭された。
 
それを人は楽しんでいる、という一言が妙に腑に落ち、だったらわたしも楽しみたいと思った。母とのやりとりでやる気スイッチが入ったわたしは百貨店へ出向き、和菓子屋さんのバレンタイン向けどら焼きと洋菓子屋さんのチョコ味の焼き菓子、さらにバレンタイン催事場でハート型のお煎餅を購入した。費用は去年の3倍近くなったけど、男性向けなので美味しくて腹持ちのよいものを選びたかったことと、甘いものが苦手な人のことが浮かんだ故のチョイスだ。帰宅後全社員の名前を書き出し、豪華にしたい人とそうでない人を検討してお菓子の組み合わせリストを作った。あとはダイソーで買った小袋に詰め合わせていくだけ。なんとか形になりそうだ。
 
 
たまたま会社でバレンタインの風習はあるけれど、バレンタインに正解はない。風習があっても何もしない選択肢もある。去年通り駄菓子の詰め合わせでも良い。けど今年は美味しそうなものを詰め合わせてみた。去年より喜ばれるのか、そうでないかはわからないが、わたしが去年より楽しめたからそれでいい。
 
 
延々バレンタインへの思いを綴ったが、いわゆる本命チョコをあげる相手がいない。とても残念である。来年はその楽しみを得たい。