ときどき考える、ときどき日記

アラサー社畜(会社員)がこれからの人生について考えたり、日記を書いています

雨宮まみ 著 「東京を生きる」

 

 

東京を生きる

東京を生きる

 

 

 

 

東京が好きだ。復元された東京駅のように西洋風の近代建築もあれば瀟洒な美しい商業ビルもあって、お洒落な人たちであふれて見えて、海外からやってきた新しいグルメもあり、最先端技術やアイデアの発信地だと言わんばかりのユニークな展示物やサービスがある。地下鉄もJRも、数分間隔でホームに滑り込んで来るから待つことがない。
 
日本のメディアは、特に在京キー局のテレビの放送は、東京という土地に憧れるようにできていると思う。
毎日朝と昼と夜まで、情報番組で東京の新しいお店やスイーツや会社員の様子まで放送している。
年に数回東京へ行くわたしも、もう何年も行っていない人たちも、行ったことのない人でさえも、同じ情報を一旦受け止め、「行ってみたいねぇ」だの「食べたい」だの「こんなのちっとも美味しそうじゃない」だの「値段が高い」だのと発信元には聞こえない言葉を好き勝手に口にする。
発信元はあくまで「こんなところもあるし、こんなものもあるというお知らせ」のように発信しているけれど、見ているうちに「羨望しろ」と言われているような気になってくるのは、穿った見方なのかもしれない。
 
わたしは雨宮まみさんの文章が好きだ。著作を数冊持ち、Webの連載の更新をチェックしている程度だけど、とても好きだ。美しくて、誰かを執拗に攻撃しない、むしろ読んでいるうちにだんだん守られているような気持ちになってくる文章だ。個人的には書店の女性向けの自己啓発コーナーに置かれるような本よりも、よっぽど日常でふと見つかる、感情のささくれのようなものが和らいでくると思う。
 
その最たる例が、ココロニプロロ内の連載「穴の底でお待ちしています」だ。

cocoloni.jp

誰にも言えない、けれど誰かに言いたい、そんな内緒の悩みやモヤモヤ、しょうもないグチからやりきれないつらさまで、穴を掘ってこっそり叫んでみたい気持ちを発散する、「感情の吹きだまり」……。そんな場所がこのコーナーです。あなたのやるせない気持ちを、安心してブチまけてみませんか? 雨宮まみが聞き手をつとめます。長文の投稿歓迎いたします。
 
相談者のどうしようもなく手の着けようのない、でも辛くて救いを求めたくて切実な悩みに、毎回雨宮さんは真摯に寄り添っている。投稿された文章も大抵長文だが、雨宮さんのコメントもかなりの長文だ。もう、圧巻。投稿したのは自分ではないはずなのに、いつのまにか雨宮さんのコメント内の相談者が自分と重なって、iPhoneを見つめる視界が涙で歪んでくる。結論は、優しいの一言。そういえば以前ほとんど同じことをツイートしていた。

 

その雨宮さんの新刊が今日全国発売となった。

タイトルは「東京を生きる」。

福岡県出身で、大学進学時に上京してから東京で生活している雨宮さんの、小説のようなエッセイだ。Amazonの紹介にも「私小説エッセイ」とあるので、分類としてはエッセイなのだろう。

 

しかし、読み始めるとわたしの思う「エッセイ」のジャンルではなかった。エッセイというと何となくのほほんとしたり、くすっと笑いを誘ったり、感情の起伏を日常の風景とともに綴られたもののイメージがある。けれど、この「東京を生きる」には、日常の風景や感情の起伏よりも強い、緊張感と孤独を感じた。

 

例えるならまるで、東京で生きることの希望や絶望、憧れと諦めを生地によく練りこんで、伸ばして、焼き上げると切った断面が幾層にもなるように膨らんだパイ生地のようだ。

孤独や不安や焦燥を甘めに味付けしたクリームに混ぜて、パイ生地に挟んで、煌びやかさや刺激で飾られてできたミルフィーユみたいだと思った。
美味しいけれど、複雑な味がして、簡単には材料が分からない。自分の知らない、材料の分からない複雑な味がするからこそ、美味しいような気がする。
そういうデザートを食べたときと同じ気持ちになった。宝石のように美しくて、食べるととても美味しいけど、1ピースの価格が近所のケーキ屋さんと倍以上違う、自分には不相応かもと思わされるデザートを食べたとき、に似ている。
 
 
今回「東京を生きる」の発売を記念して、期間限定ブログが設けられている。
また、質問にも答えて頂けるとのこと。

 

憧れの方とコミュニケーションを取れるなら、多少の恥はかき捨て!のモットーで生きているので、早速質問させて頂いた。

期間限定ブログのほうで全ての質問に回答されているようで、ここへの引用は控えるがわたしの質問にも回答頂いて嬉しかった。

 

最後に唐突だが、上にツイートの通り、最近上京を目指して転職活動を始めた。

まだ始めたばかりで書類審査の結果すら届かない状態だが、今回こそは諦めたくない。新卒のときに一度諦めたことをこの先も引きずりたくはないし、「できなかったんだよね」ともう自嘲したくもない。そうそう上手くは転ばないかもしれないけれど、当面、諦めずに活動する意思表示としたい。